説明
アルペッジョの一撃で始まり、低音の連打がティンパニのように響く、「テンペスト」ソナタの緩徐楽章です。Op.31の3曲は1802年、ベートーヴェンが難聴を認めた「ハイリゲンシュタットの遺書」を書いた年の作です。「テンペスト」の通称は、弟子シンドラーが「この曲を理解するにはシェイクスピアの『テンペスト』を読め」と作曲者に言われたと伝えたことに由来しますが、シンドラーの証言は今日では信頼されておらず、題名はベートーヴェン自身のものではありません。
変ロ長調の3拍子。冒頭のアルペッジョは、第1楽章が分散和音の問いかけで始まったことと呼応しています。展開部を持たないソナタ形式で、提示部のあと主題がそのまま再現される簡潔な構成です。
上級とされながら、音数は8分近い演奏時間に対して驚くほど少なく、難しさは鳴っていない時間のほうにあります。休符を待てるか、pp をさらに下げられるか、低音の連打を音楽の脈にできるか。指ではなく耳と時間感覚が試される楽章です。
ベートーヴェンの初期作品をはじめ、古典派・ロマン派を代表するピアノソナタを収録。複数楽章にわたる本格的な作品が並ぶ
「ピアノソナタ」の曲一覧を見る →楽譜提供: Mutopia Project
作曲家について
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン (1770-1827)
ドイツ・ボンに生まれ、ウィーンで活躍した作曲家で、古典派からロマン派への橋渡しをした音楽史上最大級の存在です。晩年に聴力を失いながらも創作を続け、交響曲やピアノソナタで革新的な形式と激しい感情表現を追求しました。ピアノ曲では「エリーゼのために」や32曲のピアノソナタが広く親しまれています。本サービスでは、「エリーゼのために」やOp.49の2つのソナタ、初期のピアノソナタの各楽章、変奏曲などを収録しています。
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