説明
分散和音で駆け上がる主題を、左手が1小節遅れでそのまま模倣していくヘ長調のインヴェンションで、15曲の中でもっとも明るく快活な一曲として知られています。1723年の曲集は二声の歌わせ方と作曲の基礎を学ぶために編まれましたが、この第8曲が扱うのは、跳躍を含む音型を軽やかに保ったまま両手で追いかけ合う技術です。
曲の相当部分がこの厳格な追いかけで進むため、二つの声部が終始同じ姿で重なり、3拍子の明快なリズムの推進力が途切れません。後半は主題が反転して現れ、下降の勢いに転じます。
跳躍を正確に当てる技術と、それを重くしないタッチの両方が要る曲です。音を外さないことに気を取られると音が固くなり、この曲の身上である軽快さが失われます。腕を使って移動し、指先は軽く——テンポを上げる前に、跳躍の着地だけを取り出して練習すると効果があります。
バッハが息子の音楽教育のために作曲した15曲からなる2声の対位法練習曲集。BWV772-786
「2声のインヴェンション」の曲一覧を見る →楽譜提供: Mutopia Project
この曲で身につけること
インヴェンション第8番 ヘ長調。分散和音で駆け上がる動機を、左手が右手のすぐあとを追いかけるカノン風の始まりが特徴です。
練習のポイント
- 追いかける左手が、先に出た右手と同じ表情で弾けているか比べてみましょう。
- 軽快なテンポの曲ですが、0.75倍速でも音がはっきり分離して聴こえることを優先してください。
作曲家について
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ (1685-1750)
ドイツ・バロック音楽を代表する作曲家で、音楽一家バッハ家に生まれ、ライプツィヒの聖トーマス教会カントルを長く務めました。対位法の頂点を極めた作曲技法で知られ、「平均律クラヴィーア曲集」や「インヴェンション」など鍵盤音楽の基礎を築きました。本サービスでは、「アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳」のメヌエットやポロネーズ、インヴェンションとシンフォニア、平均律クラヴィーア曲集のフーガなどを収録しています。音楽帳の小品は BWV Anh.(付録)の番号で目録に入っていますが、ペツォールトのメヌエットのように他の作曲家の作品や作者不詳の曲も多く、多くの曲のページで作者についての現在の見方を記しています。
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