説明
冒頭2拍に現れるたった一つの音型だけで、曲全体が組み上げられています。1723年にまとめられた15曲の「インヴェンション」の第1曲で、バッハは序文で、この曲集の目的を、単に音符を弾くのではなく「歌うように弾く奏法」を身につけ、あわせて作曲の手ほどきを得ることだと明言しています。長男ヴィルヘルム・フリーデマンのための教材帳から発展した曲集で、300年を経た今も、対位法を学ぶ最初の一冊であり続けています。
右手が示した主題を左手が追いかけるところから始まり、やがて反行形や転調を交えながら、二つの声部が終始対等に語り合います。調はハ長調、拍子は4分の4で、伴奏らしい伴奏はどこにもありません。
この中級曲の難しさは、速さではなく独立にあります。左右の手がそれぞれ別の歌を持ち、しかも主題が手から手へ渡るたびに、どちらを前に出すかが入れ替わります。片手ずつ、次に両手をゆっくり——この曲に限っては、遅いテンポでの練習がそのまま仕上がりの質になります。
バッハが息子の音楽教育のために作曲した15曲からなる2声の対位法練習曲集。BWV772-786
「2声のインヴェンション」の曲一覧を見る →楽譜提供: Mutopia Project
この曲で身につけること
インヴェンション第1番 ハ長調。冒頭の短い動機(モチーフ)が、右手と左手に交互に現れ、形を変えながら曲全体を組み立てていきます。
練習のポイント
- 冒頭の動機を覚えたら、楽譜表示で曲中にその動機がどこに現れるかを探しながら聴いてみましょう。上下を逆にした形も出てきます。
- 動機が左手に移ったときは、左手が主役です。その瞬間に右手を少し控えめにします。
- 0.5倍速で両手を合わせ、二つの声部が同時に聴こえるかを確かめながら速度を上げます。
この曲で試せる練習ガイド
ゆっくり練習のすすめ:再生速度とループの使い方
弾けない箇所を、速度を落としてループで繰り返し、段階的にテンポを上げていく方法。ループ範囲の選び方とノート速度との使い分けも解説します。
自分のMIDIファイルを用意して開くには
使ってよいMIDIファイルの入手先、このプレーヤーで見やすいファイルの条件、トラック・ペダル・音量の扱い、よくあるトラブルと直し方をまとめました。
難易度とスコアの読み方、次の曲の選び方
初級・中級・上級の区分と、1〜10の難易度スコアがどう計算されているか、そしてそれを使って次に弾く曲を選ぶ方法を説明します。
作曲家について
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ (1685-1750)
ドイツ・バロック音楽を代表する作曲家で、音楽一家バッハ家に生まれ、ライプツィヒの聖トーマス教会カントルを長く務めました。対位法の頂点を極めた作曲技法で知られ、「平均律クラヴィーア曲集」や「インヴェンション」など鍵盤音楽の基礎を築きました。本サービスでは、「アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳」のメヌエットやポロネーズ、インヴェンションとシンフォニア、平均律クラヴィーア曲集のフーガなどを収録しています。音楽帳の小品は BWV Anh.(付録)の番号で目録に入っていますが、ペツォールトのメヌエットのように他の作曲家の作品や作者不詳の曲も多く、多くの曲のページで作者についての現在の見方を記しています。
バッハの作品一覧を見る →