ソナチネとインヴェンションから、モーツァルトのソナタへ
中級に入ると、日本では「ソナチネアルバム」から「ソナタアルバム」へ、そしてバッハの「インヴェンション」へ進むのが一般的です。北米の検定(RCMなど)の中級でも、ベートーヴェンのソナチネ、バッハのインヴェンション、ショパンの前奏曲、モーツァルトのソナタが繰り返し課題曲になります。
このコースは、その両方で定番になっている曲を一本の道にまとめました。クーラウとベートーヴェンでソナタ形式とロンドに慣れ、バッハで二つの声部を同時に弾くことを学び、ショパンでロマン派の表情に触れてから、モーツァルトのピアノソナタ ハ長調 K.545の全楽章に挑みます。
古典派の音楽で大切なのは、音の粒のそろい、フレーズの明確な区切り、そして長調と短調・強と弱の対比です。楽章ごとに性格がはっきり違うので、それぞれが何を表しているかを考えながら弾いてみてください。
- 対象
- ブルグミュラーや初級のソナチネを終え、数ページの曲を通して弾けるようになった方向けです。
- このコースのゴール
- ソナタ形式の流れと二声の書法がわかるようになり、モーツァルトのソナタ K.545を全楽章通して弾けるようになります。
コースの曲順
- STEP 1
ソナチネ Op.20-1 第1楽章
この曲で身につけること
「ソナチネアルバム」の定番、クーラウのソナチネ Op.20-1の第1楽章。主題の提示・展開・再現というソナタ形式を、一つの楽章としてはっきり体験します。
練習のポイント
- まず通して聴き、冒頭の主題が後半で戻ってくる場所を見つけましょう。それが曲の地図になります。
- 楽章が長くなるので、主題ごとにループで区切って練習します。
- 練習ノートの「マイ曲」で「練習中」にしておくと、複数楽章の進み具合を整理できます。
- STEP 2
ピアノソナタ第20番 Op.49-2 第2楽章
この曲で身につけること
ベートーヴェンの「やさしいソナタ」Op.49-2から、メヌエットのテンポによる第2楽章。気品のある主題が何度も戻ってくるロンド風の構成です。
練習のポイント
- 主題が戻ってくるたびに、同じ表情で弾けているかを意識しましょう。
- 主題の間に挟まる部分は性格が違います。ループで区切って、それぞれの違いを弾き分けます。
この曲で身につけること
同じソナタの第1楽章、ト長調のアレグロ。三連符の動きと、はっきりした強弱の対比にベートーヴェンらしさが表れます。
練習のポイント
- 三連符を均等に弾けているか、0.5倍速で流れる音符の間隔を見ながら確認しましょう。
- 強弱の変化は急に起こるところがあります。楽譜表示で強弱記号を確かめ、思い切って差をつけます。
- STEP 4
インヴェンション 第1番 ハ長調
この曲で身につけること
インヴェンション第1番 ハ長調。冒頭の短い動機(モチーフ)が、右手と左手に交互に現れ、形を変えながら曲全体を組み立てていきます。
練習のポイント
- 冒頭の動機を覚えたら、楽譜表示で曲中にその動機がどこに現れるかを探しながら聴いてみましょう。上下を逆にした形も出てきます。
- 動機が左手に移ったときは、左手が主役です。その瞬間に右手を少し控えめにします。
- 0.5倍速で両手を合わせ、二つの声部が同時に聴こえるかを確かめながら速度を上げます。
- STEP 5
インヴェンション 第8番 ヘ長調
この曲で身につけること
インヴェンション第8番 ヘ長調。分散和音で駆け上がる動機を、左手が右手のすぐあとを追いかけるカノン風の始まりが特徴です。
練習のポイント
- 追いかける左手が、先に出た右手と同じ表情で弾けているか比べてみましょう。
- 軽快なテンポの曲ですが、0.75倍速でも音がはっきり分離して聴こえることを優先してください。
- STEP 6
平均律クラヴィーア曲集 第1巻 前奏曲 第1番
この曲で身につけること
平均律クラヴィーア曲集第1巻の第1番、ハ長調の前奏曲。同じ分散和音の形が最後まで続き、和音の移り変わりだけで音楽が進みます。「ソナチネアルバム」にも収められている、中級の入口の定番曲です。
練習のポイント
- 各小節の分散和音を、一度和音としてまとめて押さえてみましょう。和音の流れがわかると暗譜も楽になります。
- 同じ形が続くので、わずかなムラが目立ちます。0.6倍速で、全部の音が同じ長さ・同じ大きさになるように。
- 和音が緊張から解決へ向かう場所で、少しだけ音量を変えると曲に呼吸が生まれます。
- STEP 7
前奏曲 Op.28-4 ホ短調「窒息」
この曲で身につけること
中級で最初に弾くショパンとして定番の、前奏曲 Op.28-4 ホ短調。右手の簡素な旋律の下で、左手の和音が少しずつ音を変えながら刻まれ続けます。左手を均一に小さく保つコントロールと、ロマン派の表情を学びます。
練習のポイント
- 左手の和音だけを弾き、どの音が変わっていくかを確かめましょう。変わる音を少しだけ意識すると、和声の移ろいが聴こえてきます。
- 右手の旋律は音が少ないぶん、一音一音の音色が大切です。
- STEP 8
ピアノソナタ第16番 K.545 第1楽章
この曲で身につけること
モーツァルトのピアノソナタ ハ長調 K.545の第1楽章。誰もが知る主題、音階の連なり、そして再現部が主調ではなくヘ長調から始まるという独特の構成をもっています。
練習のポイント
- 長い音階は、指くぐりの箇所で音が凸凹しやすい部分です。音階だけをループで取り出して練習しましょう。
- 左手の伴奏(ド・ソ・ミ・ソのような分散和音、アルベルティ・バス)は、右手よりずっと小さく、均一に。
- 冒頭の主題が戻ってくる場所を聴いて、最初とは違う調で始まっていることを確かめてみてください。
- STEP 9
ピアノソナタ第16番 K.545 第2楽章
この曲で身につけること
第2楽章、ト長調のアンダンテ。左手の伴奏が絶えず流れる上で、右手が長い旋律を歌います。古典派の緩徐楽章の歌い方を学びます。
練習のポイント
- 左手だけで弾いたとき、伴奏が一定の速さと音量で流れているかを確かめます。
- 右手の旋律は、ピアノで弾く「アリア」のつもりで。フレーズの頂点と終わりを意識しましょう。
- STEP 10
ピアノソナタ第16番 K.545 第3楽章
この曲で身につけること
終楽章、ハ長調のロンド。短く明るい主題が繰り返し戻ってくる、軽やかな締めくくりです。ここまで身につけた粒のそろいと軽いタッチの総仕上げになります。
練習のポイント
- 主題は短いので、まずここを軽やかに弾けるまで仕上げましょう。
- 第1楽章から通して弾くと、三つの楽章の性格の違いがよくわかります。練習ノートに全楽章を通せた日を記録してみてください。
どのコースにも共通する進め方
- まず流れる音符で一度通して聴き、曲全体の形をつかみます。
- 速度を0.5倍前後まで落とし、片手ずつ音と指づかいを確認します。
- 難しい箇所は区間リピート(A-Bループ)で切り出し、止まらずに弾けるまで繰り返します。
- 両手で合わせ、速度を少しずつ元に戻していきます。
- 練習ノートに時間と気づきを記録すると、次に弾くときの手がかりになります。