バッハの小品から、インヴェンションとシンフォニアへ
バッハは1720年、長男ヴィルヘルム・フリーデマンの鍵盤教育のために「クラヴィーア小曲集」を書き始め、1723年には「インヴェンションとシンフォニア」を清書しました。その序文には、二つ、そして三つの声部をきれいに弾くこと、歌うように弾くことが目的として書かれています。
このコースは、その教育の順番をなぞります。指使いの練習曲から始め、「アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳」のメヌエットで両手の受け答えに慣れ、小前奏曲で途切れない音の流れを両手で受け渡し、インヴェンションで二声、最後にシンフォニア第1番で三声に進みます。
どの曲も、片手ずつを一つの旋律として仕上げてから合わせるのが近道です。インヴェンション第1番と第8番は「ソナチネとインヴェンションから、モーツァルトのソナタへ」のコースに入っているので、あわせて弾くとより多くの書き方に触れられます。
- 対象
- バッハのメヌエットを1〜2曲弾いたことがあり、両手がそれぞれ別の旋律を弾く音楽をもっと深めたい方向けです。
- このコースのゴール
- 二つの声部を聴き分けながら同時に弾けるようになり、三声のシンフォニア第1番に取り組めるようになります。
コースの曲順
- STEP 1
運指練習曲
この曲で身につけること
フリーデマンのための「クラヴィーア小曲集」の最初の曲で、題名は「指使い」という意味です。バッハ自身が指番号を書き込んでいます。ハ長調、4/4拍子で、右手の旋律と左手の低音の二声で書かれ、旋律には装飾音がつきます。
練習のポイント
- 手持ちの楽譜にバッハの指番号が載っていれば、その通りの指で弾いてみましょう。決められた指で弾くと、手の位置の移り方が自然に身につきます。
- 装飾音は0.5倍速にして、どの音から始まり、どこで拍に収まるかを流れる音符で確かめます。
- ごく短い曲なので、全体をループして片手ずつ何度も通します。
- STEP 2
メヌエット イ短調
この曲で身につけること
「アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳」のイ短調のメヌエット(作曲者は確定していません)。3拍子で、右手の旋律と左手が交互に受け答えをします。前半と後半をそれぞれくり返す二部形式です。
練習のポイント
- 左右の手の色を見ながら、一方の手が休んでいる間にもう一方の手が答えている場所を探しましょう。答える側の手が主役です。
- 1拍目に自然な重さを置きます。フレーズの区切りで止まらず、先へつなげて弾くと舞曲らしくなります。
- 後半は平行調のハ長調の響きへ向かってから、イ短調に戻ってきます。楽譜表示で、響きが変わるところを追ってみてください。
- STEP 3
前奏曲 第2番 BWV 926
この曲で身につけること
フリーデマンの小曲集に含まれ、のちに「小前奏曲」として親しまれるようになった曲の一つ(BWV 926)。ニ短調、3/4拍子で、右手が分散和音の音型をくり返し、左手が和声を支えます。同じ音型の中で、和音が変わる瞬間を聴かせることを学びます。
練習のポイント
- 右手の分散和音を一度ブロック和音(同時に押さえる形)にして弾き、和音の移り変わりを先に覚えます。
- 0.75倍速で、くり返す音型の粒がそろっているかを確かめます。
- 和音が変わるところで、わずかに音色を変える意識を持ちます。A-Bループで短く区切って練習しましょう。
- STEP 4
小前奏曲 第9番
この曲で身につけること
同じく小前奏曲から、ヘ長調、4/4拍子の曲(BWV 928)。16分音符の流れが右手と左手の間で受け渡されます。インヴェンションに入る前に、途切れない動きを両手でつなぐ練習です。
練習のポイント
- 流れる音符の色が変わるところが、音型が反対の手に移る場所です。そこだけをA-Bループで切り出して練習しましょう。
- 受け渡しで拍がずれなくなるまでは0.5倍速のままで。速さは最後に上げます。
- STEP 5
インヴェンション 第13番 イ短調
この曲で身につけること
インヴェンション第13番 イ短調。分散和音を駆け上がって跳ね返る主題が、両手の間で休みなく受け渡されます。二つの声部のどちらが主役かを場面ごとに決め、弾き分けることを学びます。
練習のポイント
- 主題が左手に移ったら、そのあいだは左手が主役です。楽譜表示で、主題が現れる場所を一つずつ確かめながら聴きましょう。
- 跳ね返る音型のいちばん上の音をわずかに重くすると、旋律の輪郭がはっきりします。
- 0.5倍速で両手を合わせ、二つの声部が両方聴こえる状態を保ちながら速度を上げます。
- STEP 6
インヴェンション 第4番 ニ短調
この曲で身につけること
インヴェンション第4番 ニ短調、3/8拍子。回り続ける主題が両手の間を休みなく行き来し、後半では主題が上下逆の形で戻ってきます。速い音の流れの中で、拍子の感覚を保つことを学びます。
練習のポイント
- 3/8拍子の1小節を大きな1拍と感じ、2小節・4小節のまとまりで数えると流れが安定します。
- 速くするほど崩れやすい曲です。0.75倍速で崩れずに通せることを確かめてから、少しずつ速度を上げましょう。
- 楽譜表示で、後半に主題が上下逆の形で現れる場所を探してみてください。
- STEP 7
シンフォニア 第1番 ハ長調
この曲で身につけること
このコースのゴール、シンフォニア(三声のインヴェンション)第1番 ハ長調。音階を駆け上がる16分音符の主題が声部から声部へ受け渡され、下降する逆の形でも現れます。2本の手で3つの声部を弾く段階です。
練習のポイント
- 真ん中の声部は、右手が弾くところと左手が弾くところがあります。流れる音符の色で、いまどちらの手が受け持っているかを確かめ、指使いを先に決めましょう。
- 0.5倍速で、3本の旋律線を耳で追えるか試します。一つの声部だけを口ずさみながら聴くのも良い練習です。
- A-Bループで主題が入ってくる場所を一つずつ切り出し、どの声部に現れたかを聴き比べます。
どのコースにも共通する進め方
- まず流れる音符で一度通して聴き、曲全体の形をつかみます。
- 速度を0.5倍前後まで落とし、片手ずつ音と指づかいを確認します。
- 難しい箇所は区間リピート(A-Bループ)で切り出し、止まらずに弾けるまで繰り返します。
- 両手で合わせ、速度を少しずつ元に戻していきます。
- 練習ノートに時間と気づきを記録すると、次に弾くときの手がかりになります。
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