シューマンとチャイコフスキー、情景を描く小品集
ロマン派の作曲家は、子どもや家庭のために、題名のついた短い曲をたくさん書きました。シューマンの「子どものためのアルバム」Op.68(1848年)と、チャイコフスキーの「子供のためのアルバム」Op.39(1878年)はその代表です。一曲ごとに一つの情景や気分が描かれていて、指の技術よりも「どんな音で弾くか」を考えるのに向いています。
このコースは、和音の中の旋律、左手で歌う旋律、短く切る和音、音と音の間(ま)、6/8拍子のはずむリズム、と一曲ごとに課題を一つずつ増やします。最後に、シューマンが子ども時代を振り返る大人のために書いた「子どもの情景」Op.15から2曲を弾きます。
題名は弾き方のヒントです。弾く前に、題名から思い浮かぶ情景を一つ決めておき、弾き終えたら自分の音がその情景に聴こえたかを振り返ってみてください。
- 対象
- 導入教本を終え、短い曲なら両手で弾けるようになった方向けです。「導入教本のあとに弾く、定番の小品」と並行して進めても構いません。
- このコースのゴール
- 題名から曲の性格を考えて音色を選ぶ習慣が身につき、「トロイメライ」を自分なりのテンポの揺らし方で弾けるようになります。
コースの曲順
- STEP 1
子供のためのアルバム「朝の祈り」
この曲で身につけること
チャイコフスキーの「子供のためのアルバム」の第1曲。ト長調、3拍子で、聖歌のような4声の和音が静かに進みます。和音のいちばん上の音(旋律)を、ほかの音よりわずかに浮かせることを学びます。
練習のポイント
- 0.5倍速にして、まず和音のいちばん上の音だけを右手で歌うように弾き、そのあとでほかの音を加えます。
- ペダルは和音が変わるたびに踏み替え、前の和音を次に持ち越さないように。ただし最初はペダルなしで、指だけで和音をつなぐ練習から始めます。
- 一日の始まりを描く曲集の最初の曲です。大きな盛り上がりは作らず、静かなまま弾き終えましょう。
この曲で身につけること
「楽しき農夫」。ヘ長調、4/4拍子で、旋律が左手にあり、右手が和音で伴奏します。いつもと逆の役割分担で、低い音域で旋律を歌うことを学びます。
練習のポイント
- このファイルは2つ目のトラックが空で、左手は3番目の色(紫)で流れます。紫だけを追い、旋律を左手一本で歌えるようにしてから右手を加えます。
- 右手の和音は短く軽く。旋律より必ず一段小さく保ちます。
- 0.75倍速で両手を合わせ、右手の和音が左手の旋律を覆っていないかを聴きます。
- STEP 3
子供のためのアルバム「木の兵隊の行進」
この曲で身につけること
チャイコフスキーの「木の兵隊の行進」。ニ長調、2拍子で、短く切った和音が一定のテンポで並び、おもちゃの兵隊のぎこちない行進を描きます。これまでの「つなぐ」和音に対して、ここでは「切る」和音です。
練習のポイント
- 和音は手首の力を抜き、指先で軽く離します。腕で押しつけると、硬く重い音になります。
- ビートラインを表示して、テンポが走ったり遅れたりしていないかを確かめましょう。
- 全体を小さめの音量で。おもちゃらしさは音の大きさではなく、正確なリズムから生まれます。
この曲で身につけること
「はじめての悲しみ」。ホ短調、2/4拍子。音が少ないぶん、一音一音の重さとフレーズの終わり方がそのまま表情になります。次の音の前でわずかに待つ「間」を学びます。
練習のポイント
- まず一定のテンポで弾けるようにし、そのあとで、どこで少し待つかを決めます。最初から揺らすと、待つ場所が毎回変わってしまいます。
- フレーズの終わりの音は、前の音より小さく、そっと置くように。終わり方だけをA-Bループで繰り返し練習します。
この曲で身につけること
「刈入れの歌」。ハ長調、6/8拍子で、拍の裏から始まるシンコペーションのリズムがくり返し現れ、収穫の喜びをはずむように描きます。
練習のポイント
- 6/8拍子は、1小節を大きな2拍で数えます。シンコペーションで拍を見失いそうなら、0.75倍速で数えながら聴きましょう。
- リズムがあやしいところはA-Bループで区切り、手拍子でリズムだけを確かめてから弾きます。
- 両手の動きを色で確かめ(右手は青、左手は2つ目のトラックが空のため紫)、拍の頭をどちらの手が弾いているかを把握しておくと崩れにくくなります。
この曲で身につけること
「子どもの情景」Op.15の第1曲「見知らぬ国と人々について」。ト長調、2拍子で、左手の分散和音の上で右手が静かに歌います。片方の手の三連符ともう片方の手の2つ割りが重なる箇所があり、両手で違うリズムを弾くことを学びます。
練習のポイント
- 左手の分散和音が一定の流れになるまで、左手だけを繰り返します。
- 両手を合わせるときは拍の頭だけをそろえ、その間を数えて合わせようとしないこと。0.5倍速の流れる音符で、拍の頭で両手がそろう様子を確かめます。
- 楽譜表示で、冒頭の旋律が最後にもう一度戻ってくることを確かめましょう。戻ってきたときの弾き方を、最初と変えるかどうかを考えてみてください。
- STEP 7
子どもの情景 Op.15 第7番「トロイメライ」
この曲で身につけること
このコースのゴール、「トロイメライ」。ヘ長調、4/4拍子で、冒頭の短い主題が調と和音を変えながら何度も戻ってきます。技術的な難しさはほとんどなく、テンポの揺らし方と内声の聴かせ方を自分で決めることが課題です。
練習のポイント
- まずはテンポを揺らさず、一定の速さで最後まで弾けるようにします。そのあとで、どこで時間を使いたいかを決めましょう。
- 主題が戻ってくるたびに、旋律がいちばん高い音に届く場所を流れる音符で確かめ、その一音の置き方を考えます。
- この曲は楽譜表示に対応していません。手持ちの楽譜と流れる音符を見比べながら練習してください。
どのコースにも共通する進め方
- まず流れる音符で一度通して聴き、曲全体の形をつかみます。
- 速度を0.5倍前後まで落とし、片手ずつ音と指づかいを確認します。
- 難しい箇所は区間リピート(A-Bループ)で切り出し、止まらずに弾けるまで繰り返します。
- 両手で合わせ、速度を少しずつ元に戻していきます。
- 練習ノートに時間と気づきを記録すると、次に弾くときの手がかりになります。
ほかのコース
導入教本のあとに弾く、定番の小品
バッハのメヌエット、シューマンとチャイコフスキーの「子供のためのアルバム」、そしてクレメンティのソナチネへ。
- 子どものためのアルバム Op.68 第1番「メロディー」
- メヌエット ト長調 BWV Anh.114
- メヌエット ト短調 BWV Anh.115
- 子どものためのアルバム Op.68 第2番「兵士の行進」
- …
ブルグミュラー「25の練習曲」から「エリーゼのために」へ
一曲ごとに一つの技術。日本のピアノ教室の定番曲集を12曲で進み、最後は「エリーゼのために」。
- 第1番 素直な心
- 第2番 アラベスク
- 第3番 牧歌
- 第4番 小さな集会
- …
ソナチネとインヴェンションから、モーツァルトのソナタへ
クーラウ、ベートーヴェン、バッハ、ショパン。中級の定番曲を経て、モーツァルトのソナタ K.545を全楽章仕上げます。
- ソナチネ Op.20-1 第1楽章
- ピアノソナタ第20番 Op.49-2 第2楽章
- ピアノソナタ第20番 ト長調 Op.49-2 第1楽章
- インヴェンション 第1番 ハ長調
- …
バッハの小品から、インヴェンションとシンフォニアへ
息子のための「運指練習曲」、音楽帳のメヌエット、2つの小前奏曲を経て、二声のインヴェンション、三声のシンフォニアへ。
- 運指練習曲
- メヌエット イ短調
- 前奏曲 第2番 BWV 926
- 小前奏曲 第9番
- …
はじめてのショパン、前奏曲からノクターンへ
短い前奏曲から始めて、遺作のワルツとノクターン、「雨だれ」の前奏曲、そしてノクターン Op.9-2へ。
- 前奏曲 Op.28-7 イ長調
- 前奏曲 Op.28-20 ハ短調「葬送」
- 前奏曲 第6番 ロ短調 Op.28-6
- ワルツ Op.69-2 ロ短調(遺作)
- …
サティからドビュッシーへ、響きと間を味わう
「ジムノペディ」と「グノシエンヌ」の静かな響きから、ドビュッシーの「アラベスク第1番」と「月の光」へ。
- ジムノペディ 第1番
- グノシエンヌ 第1番
- ジムノペディ 第3番
- グノシエンヌ 第3番
- …