説明
モーツァルトが1788年に書いたこのソナタを、本人は自作目録に「初心者のための小さなクラヴィーア・ソナタ」と記しました。「ソナタ・ファシレ(易しいソナタ)」の呼び名はそこから来ています。生前には出版されず、死後の1805年になって世に出ました。交響曲第41番「ジュピター」と同じ年の作品です。
ハ長調の4拍子。教科書どおりの明快なソナタ形式ですが、一つだけ型を外れる箇所があります。再現部が主調のハ長調ではなく、下属調のヘ長調で始まるのです。弾いていると当たり前に聞こえるこの選択は、形式の常識から外れた処理として知られています。
易しいと呼ばれる一方で、音がすべて露わになる曲でもあります。装飾も厚い和音もないため、音階の粒の不揃いも、左手のアルベルティ・バスの乱れも隠せません。テンポを上げる前に、左手だけを一定に保てるかを確認すること。初級者にとっての本当の課題は、速さではなく均質さです。
ベートーヴェンの初期作品をはじめ、古典派・ロマン派を代表するピアノソナタを収録。複数楽章にわたる本格的な作品が並ぶ
「ピアノソナタ」の曲一覧を見る →楽譜提供: Mutopia Project
この曲で身につけること
モーツァルトのピアノソナタ ハ長調 K.545の第1楽章。誰もが知る主題、音階の連なり、そして再現部が主調ではなくヘ長調から始まるという独特の構成をもっています。
練習のポイント
- 長い音階は、指くぐりの箇所で音が凸凹しやすい部分です。音階だけをループで取り出して練習しましょう。
- 左手の伴奏(ド・ソ・ミ・ソのような分散和音、アルベルティ・バス)は、右手よりずっと小さく、均一に。
- 冒頭の主題が戻ってくる場所を聴いて、最初とは違う調で始まっていることを確かめてみてください。
この曲で試せる練習ガイド
ゆっくり練習のすすめ:再生速度とループの使い方
弾けない箇所を、速度を落としてループで繰り返し、段階的にテンポを上げていく方法。ループ範囲の選び方とノート速度との使い分けも解説します。
難易度とスコアの読み方、次の曲の選び方
初級・中級・上級の区分と、1〜10の難易度スコアがどう計算されているか、そしてそれを使って次に弾く曲を選ぶ方法を説明します。
作曲家について
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト (1756-1791)
オーストリア・ザルツブルクに生まれ、幼少期から神童として名を馳せた古典派を代表する作曲家です。ウィーンを拠点に活躍し、35年という短い生涯の中で交響曲・オペラ・室内楽・鍵盤曲など幅広いジャンルに傑作を残しました。明快で均整の取れた様式の中に豊かな感情表現を宿す作風が特徴です。本サービスでは、ピアノソナタ K.545やK.331の各楽章、幻想曲 ニ短調 K.397、フーガなどを収録しています。
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