サティからドビュッシーへ、響きと間を味わう
サティの「ジムノペディ」(1888年)は音が少なく、速い動きもないので、初級の方でも譜読みができます。けれども、音を並べるだけでは曲になりません。一定に続く伴奏、何もせずに待つ時間、ペダルでつなぐ響き。弾く技術よりも、聴く力が問われる音楽です。
このコースは、サティの「ジムノペディ」と「グノシエンヌ」で響きと間の扱いに慣れてから、ドビュッシーの初期の作品「アラベスク第1番」へ、そして「月の光」へ進みます。ドビュッシーはサティの友人で、「ジムノペディ」の第1番と第3番を管弦楽に編曲しています。
これらの曲のMIDIにはペダル情報が入っていないため、プレーヤーにペダル表示は出ません。そのぶん、和音が変わるたびに自分の耳で濁りを確かめながら踏み替える練習になります。
- 対象
- 指を速く動かすことより、響きの美しさにひかれる方向けです。最初の3曲は、初級の方でも譜読みができます。
- このコースのゴール
- 響きを聴きながらペダルを踏み替え、テンポや間を自分で決めて弾く力が身につき、「月の光」を通して弾けるようになります。
コースの曲順
- STEP 1
ジムノペディ 第1番
この曲で身につけること
楽譜に「ゆっくりと苦しみをもって」と記された、ジムノペディ第1番。3拍子の伴奏が一定にくり返され、その上を旋律が急がずに漂います。七の和音を含む響きが、解決を急がずに移っていきます。「何もしない」ことに耐える、このコースの出発点です。
練習のポイント
- 左手の低音と和音による3拍子を、機械的にならないように一定に保ちます。まず左手だけで通せるようにしましょう。
- 右手は歌いすぎないこと。強弱をつけたくなるところを、あえて平らに弾いてみます。
- ペダルは左手の低音が変わるところで踏み替えます。ペダル表示は出ないので、前の響きが濁っていないかを耳で確かめます。
- STEP 2
グノシエンヌ 第1番
この曲で身につけること
グノシエンヌ第1番。サティの原譜には小節線も拍子記号もなく、どこで区切るかが弾き手にゆだねられています。左手が同じ伴奏音型をくり返し、右手が増2度を含む東洋風の音階で旋律を歌います。
練習のポイント
- このサイトの楽譜表示はMIDIから作っているため、便宜上の小節線が入っています。原譜にはないことを知ったうえで、自分なりの区切りを探しましょう。
- まず左手の伴奏を一定に保てるようにしてから、旋律をどれくらい伸ばし、どこで間をとるかを試します。
- 増2度(半音3つ分の音程)が出てくる場所を、流れる音符で鍵盤上の位置として確かめておくと迷いません。
- STEP 3
ジムノペディ 第3番
この曲で身につけること
「ゆっくりと厳かに」と記された、ジムノペディ第3番。第1番と同じく3拍子の伴奏の上を旋律が漂いますが、イ短調を中心にしながら短調の重さに落ち着かない、淡い色合いで進みます。同じ書き方から違う色を出すことを学びます。
練習のポイント
- 第1番と続けて弾き、和音の色の違いだけで表情がどう変わるかを聴き比べます。
- 曲の終わり方を自分で決めます。音量を落とすか、テンポをゆるめるか、何も変えないか。終わりの部分をA-Bループで何度か試してみましょう。
- STEP 4
グノシエンヌ 第3番
この曲で身につけること
グノシエンヌ第3番。5分を超える、3曲の中でもっとも大きな曲で、変わらずに続く伴奏の上で旋律だけが形を変えていきます。長い曲を、テンポを保ったまま単調にならずに弾き通す集中力を学びます。
練習のポイント
- 曲の中で一度だけ訪れる高まりがどこに来るかを先に聴いて確かめ、そこに向けて全体の音量を配分します。
- 長い曲なので、区切りごとにA-Bループで仕上げながら、練習ノートに練習時間を残していきましょう。
- STEP 5
アラベスク第1番
この曲で身につけること
ドビュッシーが20代半ばに書いた「アラベスク第1番」。ホ長調で、波のように広がる分散和音の上を旋律が漂います。右手の三連符と左手の2つ割りが重なると拍の輪郭がぼやけ、響きが宙に浮くように聴こえます。分散和音を一音ずつではなく、響きとして溶け合わせることを学びます。
練習のポイント
- 三連符と2つ割りが重なるところは、数えて合わせようとせず、両手を別々の流れとして感じます。片手ずつを0.5倍速で仕上げてから合わせましょう。
- ペダル表示は出ないので、まず流れる音符で和音が変わる場所を確かめ、自分の楽器ではそこで踏み替えます。
- 分散和音は一音ずつはっきり弾くより、響きを重ねていくつもりで。打鍵を浅く、やわらかくします。
- STEP 6
月の光
この曲で身につけること
このコースのゴール、「ベルガマスク組曲」の第3曲「月の光」。変ニ長調、9/8拍子で、3度で重なる静かな旋律から始まり、中間部では分散和音が波のように広がって、また静けさに戻ります。ここまでの響きとペダルの扱いの総仕上げです。
練習のポイント
- 冒頭の3度の旋律は、上の音をわずかに浮かせて。0.5倍速で、二つの音が同時に鳴っているかを確かめます。
- 中間部の分散和音はA-Bループで区切り、片手ずつ仕上げてから合わせます。
- 強く弾いた瞬間に、曲の世界が崩れてしまいます。いちばん盛り上がるところでも、音を押しつけずに響かせましょう。
どのコースにも共通する進め方
- まず流れる音符で一度通して聴き、曲全体の形をつかみます。
- 速度を0.5倍前後まで落とし、片手ずつ音と指づかいを確認します。
- 難しい箇所は区間リピート(A-Bループ)で切り出し、止まらずに弾けるまで繰り返します。
- 両手で合わせ、速度を少しずつ元に戻していきます。
- 練習ノートに時間と気づきを記録すると、次に弾くときの手がかりになります。
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