説明
1784年に書かれたソナタ第14番の第1楽章です。モーツァルトが完成させたピアノソナタのうち、短調で書かれたのは2曲しかなく、これはその一方にあたります。翌年、幻想曲ハ短調 K.475と組み合わせて出版され、二曲で一つの作品のように扱われてきました。教え子のテレーゼ・フォン・トラットナーに献呈されています。
ハ短調の2分の2拍子。冒頭の主題は、上昇する分散和音と、それに応える静かな音型の対比でできています。強弱が小節単位で激しく入れ替わり、緊張が持続します。第2主題は変ホ長調で歌いますが、再現部ではハ短調に引き戻され、楽章は短調のまま閉じられます。
上級とされるのは、劇的な強弱の落差を保ちながら古典的な形式感を崩さない難しさによります。フォルテで叩けば粗くなり、抑えれば緊張が消えます。強い音は腕の重さで、弱い音は鍵盤の底まで確実に——この弾き分けが要点です。ベートーヴェンがこの楽章から受けた影響は、しばしば指摘されてきました。
ベートーヴェンの初期作品をはじめ、古典派・ロマン派を代表するピアノソナタを収録。複数楽章にわたる本格的な作品が並ぶ
「ピアノソナタ」の曲一覧を見る →楽譜提供: Mutopia Project
作曲家について
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト (1756-1791)
オーストリア・ザルツブルクに生まれ、幼少期から神童として名を馳せた古典派を代表する作曲家です。ウィーンを拠点に活躍し、35年という短い生涯の中で交響曲・オペラ・室内楽・鍵盤曲など幅広いジャンルに傑作を残しました。明快で均整の取れた様式の中に豊かな感情表現を宿す作風が特徴です。本サービスでは、ピアノソナタ K.545やK.331の各楽章、幻想曲 ニ短調 K.397、フーガなどを収録しています。
モーツァルトの作品一覧を見る →