説明
ベートーヴェンが1810年に書いた、おそらく世界でもっとも知られたピアノ小品です。生前は出版されず、自筆譜も失われたまま、研究者ルートヴィヒ・ノールが1867年に写譜から発表したことで世に出ました。「エリーゼ」が誰なのかは今も分かっておらず、ノールが筆跡を読み違えたテレーゼ・マルファッティ説をはじめ、いくつもの推測が並んでいます。
イ短調、8分の3拍子。ロンド形式で、あの有名な主題が姿を変えずに三度戻ってくるあいだに、性格の異なる二つの挿入部が挟まれます。ヘ長調の穏やかな第1挿入部に対し、第2挿入部は低音の連打の上で緊張を高め、半音階の下降で主題へ帰ります。
冒頭は初級者でも手が届きますが、曲全体は決して易しくありません。難所は第2挿入部の分散和音と半音階で、ここだけ音の密度が跳ね上がります。有名な主題を丁寧に整えてから中間部に時間を割く——この配分が、最後まで弾き切れるかどうかを決めます。音域は6オクターブに広がるため、手の移動にも余裕が要ります。
特定の曲集に属さない単独のピアノ小品を集めたカテゴリ。多彩な性格を持つ作品が391曲並び、気軽に聴き比べられる
「ピアノ小品」の曲一覧を見る →楽譜提供: Mutopia Project
この曲で身につけること
このコースの目標曲です。ブルグミュラーで身につけた旋律の歌い方、分散和音、スタッカート、2音のスラーがすべて詰まっています。右手の交互の音、左手の分散和音、ペダル、そして性格の違う中間部が待っています。
練習のポイント
- 最初の主題だけを先に仕上げましょう。曲中で何度も戻ってくるので、ここが弾ければ曲の半分近くを弾いたことになります。
- 左手の分散和音から右手の旋律へ、音が途切れずに受け渡されるように。流れる音符で左右の色が交互に落ちてくる部分です。
- 中間部は別の曲だと思って、ループで区切って一つずつ練習します。
- 練習ノートに毎回の練習時間とメモを残すと、長い曲でも進み具合が見えて続けやすくなります。
この曲で試せる練習ガイド
「エリーゼのために」冒頭を練習する:最初の15分
冒頭のミとレ♯の往復から、左手の入り、両手の合わせ方まで。収録曲を開いて試せる15分の練習例と、次に進む目安をまとめました。
ゆっくり練習のすすめ:再生速度とループの使い方
弾けない箇所を、速度を落としてループで繰り返し、段階的にテンポを上げていく方法。ループ範囲の選び方とノート速度との使い分けも解説します。
長続きする練習記録のつけ方
練習時間が何から記録されるか、自己評価と習熟度、1日の区切りと連続日数の数え方、記録をなくさないための書き出しと読み込みを説明します。
作曲家について
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン (1770-1827)
ドイツ・ボンに生まれ、ウィーンで活躍した作曲家で、古典派からロマン派への橋渡しをした音楽史上最大級の存在です。晩年に聴力を失いながらも創作を続け、交響曲やピアノソナタで革新的な形式と激しい感情表現を追求しました。ピアノ曲では「エリーゼのために」や32曲のピアノソナタが広く親しまれています。本サービスでは、「エリーゼのために」やOp.49の2つのソナタ、初期のピアノソナタの各楽章、変奏曲などを収録しています。
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